君の名は。SS ぼーいみーつがーる。がーるみーつぼーい。
当時、10/3妄想SSを書いたものの切なすぎたので救済的に書いたモノ。
書いた頃はスパークルMV前で同級生ifはまだ少なく、赦されるのかなぁ?という気持ちもありつつ、夢のおない年は浪漫がありました(笑)
いずれ修正するかもしれませんが、時間もないので取り敢えず当時のままに。
***
どうか瀧くんに会えますように――
瀧くんを探し回ってる時にたまたま見つけた神社。
仮にも神社の娘が他の神社にお願いするのはどうかと思ったけど、東京のことは東京の神社の方が御利益がありそうだったから。
奮発して500円玉を入れたんだから、どうかお願いしますっ、東京の神様!
そうは言っても、この大都会、東京。
これだけの沢山の人が行き交っていても、本当に会いたい人に偶然会える可能性はいったい何パーセントなのか。
「無計画すぎたかなぁ……」
奥寺先輩とのデートの待ち合わせ予定だった四ツ谷駅。その入り口前で一人佇む。
「東京の神様もそう簡単に瀧くんには会わせてはくれんかぁ……」
神社で買ってしまった縁結びのお守りを手に持って眺める。
そもそも、瀧くんに会って、私はどうしたいんだろう……?
その時、一陣の風が吹いた
「あ、お守り!」
風に飛ばされたお守りが宙を踊るように流されていく。
「待って!」
通学カバンを肩に掛け、追いかける。そして、それは導かれるように歩いてきた男の人の前に落ちた。
「あれ?このお守り……」
その人は、しゃがみこんでお守りを拾い上げてくれる。
「す、すみません。風に飛ばされちゃって」
「そうですか、これ以上飛ばされなくて良かっ……」
「……え」
顔を上げたその人は……
「じゃあ、予定より少し早いけど」
「え……あ、はい……」
信濃町駅近くの歩道橋の上、奥寺先輩は駅の方へと振り返る。
「またバイトでね」
手を振り、去っていく奥寺先輩。
俺の初デートは、完全に失敗に終わった。
そりゃそうだ。あいつが立てた計画に沿って行動しただけなんだから。
俺の気持ちなんてどこにもない。
終いには『ほかに好きな子がいるでしょう?』とまで言われる始末。
「本当にすいません……」
駅構内へと入っていった奥寺先輩に向かって頭を下げてお詫びする。
それでもどこか、落ち込んでいない自分がいて。
「俺は別にあいつのことなんて……」
呟き、頭を掻くが、心の中で何かが引っかかって、スッキリしない。
気晴らしに一駅歩いて帰るか、と俺はその場を後にした。
大通りを避け、適当に路地に入る。
神社入り口の看板を見かけ、あいつが住んでいる神社のことを思い出して歩を進めていく。
「なんで買ったんだ……?」
そして、俺はお守りを手に歩いている。
神社で参拝し、帰り際に縁結びのお守りを買ってしまった。
「いや、だから、俺は別にあいつのことなんて」
誰に言っているのか、独り言い訳をする。
「……あいつ、今頃何やってんだろうな」
まったくお前のおかげで今日は散々なデートだった。
直接言いたいことが山ほどあるんだからな。
……ああ、そうか。
俺はアイツに会って一言文句が言いたいのか。
だから、こうして会えるように縁結びのお守りを買ったのか。
そうか、そうに違いない。
そんな感じで脳内で自問自答している内に一駅先の四ツ谷駅に着いた。
お守りをポケットにしまい込み交差点を渡る。
その時、不意に一陣の風が吹いた。
「待って!」
どこか聞き覚えのある声が聞こえた。
と、目の前に何かが落ちる。それは今さっきまで自分が見ていたもの。
「あれ?このお守り……」
しゃがみこんでそれを拾う。
「す、すみません。風に飛ばされちゃって」
「そうですか、これ以上飛ばされなくて良かっ……」
目の前にいた人は……
改頁
「三葉……?」
「瀧くん……?」
二人視線が交わり、互いに固まる。
「瀧くん……?瀧くんがおる……」
「三葉……だよな?」
瀧がそう言った瞬間、ハッとなり三葉は後ろに振り返った。
「ちがいます」
「いや、三葉だろ?」
「私は『宮水三葉』などという人間ではありません」
(フルネーム名乗ってるじゃねえか……)
「おーい、三葉ぁ」
顔を見ようと動けば、相手もそれに合わせ慌てて背中を向ける。
「みつはさーん?」
「ちがうんやよ!」
(埒が明かない……)
瀧はスマフォを取り出すと、『宮水三葉』と登録された携帯番号に触れる。
暫くすると背中を向ける三葉のスマフォが鳴る。
三葉はそれを手に持ち着信を見ると、首を傾げそのまま電話を切った。
「電話切るなよ!」
「えっ?これ、瀧くんの番号!?」
やっと三葉が振り返った。
「あ……」
「よう」
「な、なんで……瀧くん、ここにおるんよ?」
「それはこっちの台詞じゃないですか?糸守町在住の三葉さん」
(もうっ!東京の神様、逢わせてくれるんはええけど、こっちにも心の準備ってもんがあるわっ!)
三葉は耳まで真っ赤にして何やらブツブツ言っている。
それが可愛らしくて瀧はつい笑ってしまう。
「ほら、落とし物」
「あ、ありがとう」
差し出した縁結びのお守りを、三葉は素早く手に取った。
「三葉、誰かに会いたかったのか?」
「え?」
「『縁結びのお守り』だろ、それ」
「な、な、なんで知って……!?」
「もしかして俺に会いたかったとか?」
「そ、そんな訳あるか、阿呆っ!」
プイッと三葉は横を向く。
(やばいな……)
瀧は心の中でこう思う。
(すげぇ、楽しい)
さっきまで奥寺先輩とデートしていたのに、その時には感じなかった感情。
なんだこれ、と思う。
ただ、そう感じさせてくれるのは間違いなく目の前にいる彼女のおかげで……
「俺は、会いたかったけどな」
「え……?」
ほら、とポケットからお守りを取り出し、三葉に見せる。
「三葉と同じ」
「あ……」
三葉は自分のお守りと瀧のお守りを見比べる。
「……本当やぁ」
嬉しそうに自分のお守りを手に収める。
そうやって喜んでくれてる姿が本当に嬉しくて、瀧は優しい笑みを浮かべ三葉を見つめる。
「一応、はじめまして、か?俺は瀧。立花瀧だ」
「あ、えと……はじめまして。三葉。宮水三葉やよ」
三葉の言葉に瀧は頷き、瀧の言葉に三葉は頷く。
「……会えたね!」
「ああ、会えた」
そうして二人は……
二人は……
二人は?
(やべぇ、これからどうしたらいいんだ)
(会うことしか考えとらんかった……)
互いに視線を逸らして、瀧は空を仰ぎ、三葉は口許に手をあて悩んでいる。
「そ、そうだ!そもそも何でお前、急に東京に来たんだよ!来るなら連絡寄こせよな」
「え?だって何回も電話したけど、瀧くんの電話繋がらんし。もしかして電話番号変えた?」
「変えてねえよ。そういえばお前さっき、俺の電話切ったよな」
「だって、登録されてない番号やったし」
「登録……されてない?」
「瀧くんの番号は、『090-○×△□―☆■×○』やろ?」
「俺の番号は『080-○×△□―☆■×○』だ」
「……え?」
「それじゃ掛かる訳ねえだろ」
ハァ……と瀧はため息をつく。
「ええっ!だって、これ登録したの瀧くんやろ?」
「いいや、お前のスマフォなんだから、お前がしたんだ」
「番号知っとるの、瀧くんやないの!」
「俺は覚えてない」
「くぅぅ……この男、腹立つぅ!」
花の女子高生が地団駄を踏んでいる。
「ま、いいだろ?こうして会えたんだし。結果オーライということで」
「何や、うまく誤魔化されてる気もするんやけど」
「まあ、俺だってお前に言いたいこと沢山あったんだけどさ」
瀧は秋の空を見上げた。透き通るようにどこまでも突き抜けるような真っ青な空。
今の自身の心の中のようだ。
「お前に会えたら、それだけで嬉しくってみんな忘れちまった」
ニッと笑う瀧の言葉に三葉は目を見開く。
「瀧くん……嬉しいの?」
「ん?」
「私に会えて、すこしは喜んでくれてる?」
「うーん……ちょっと違うな」
「そっか、そうやよね……」
えへへ……と三葉は苦笑いを浮かべる。
「なんつーか、少しどころか、すげぇ喜んでるみたいだ、俺」
「ほ、本当に?」
三葉の顔がパアッと笑顔に花開く。その笑顔が素敵すぎて、瀧の心臓は大きく高鳴る。
「いや、まあ、その……二度は言わない」
「ええー、瀧くん、もう一回言って!」
「いやだ」
「ええ、なんでやのー、嬉しいんやろ?」
「ぜってー言わない」
「けちー」
会話が続くごとにだんだんと二人の距離が近づく。
今はもう間近で三葉が瀧を見上げるように。もう少しすれば互いが触れるくらいの距離に。
「三葉、あのさ……」
「えっ?」
「近い……」
「ご、ごめんねっ」
慌てて離れようとした三葉の手をとっさに瀧は掴む。
顔を真っ赤にして。でも、真剣な眼差しで三葉を見つめている。
その視線があまりに熱を帯びてるから、つい目を逸らしてしまう。
「い、行こうぜ」
「……うん」
引かれる手を三葉もギュッと握り返した。
東京の街の中を二人歩く。並んで歩くと言うより、瀧が少し三葉を引っ張るような感じで。
こういうところが女心をわかっとらんのよ、と三葉は思うけど、
「大丈夫か?」
「うん……」
こうやって、すれ違う人にぶつからないように常に気遣ってくれるところは、瀧くんらしいな、とクスリと笑う。
――でも、今日は瀧くん……
そんな瀧の後ろ姿を見ながら、少し胸が締め付けられるような気持ちで問いかける。
「奥寺先輩とのデートの時も、こんな風に手を繋いだりしたん?」
「え?」
「デート……どうやったの?」
「まあ、手くらいは……な」
「へ、へえ……良かったね」
「俺からしたんじゃねえけど」
「でも、嬉しかったんやろ?」
「緊張してたから覚えてねえよ」
「奥寺先輩、綺麗やからなぁ。……でも、うまくいったみたいで、」
良かったね、と小さな声で呟く。
並木道の下、不意に瀧が立ち止まる。
「あのさ、三葉……」
「なに?」
「お前、勝手に奥寺先輩とデートの約束するなよな」
振り返った瀧はちょっとムッとしている。
「ご、ごめんね、本当は私がしたかったデートなんやけど、入れ替わり、起こらなかったから……」
えへへ……と少しぎこちなく三葉が笑う。
「で、でも、瀧くん、奥寺先輩のこと、」
「三葉ッ!」
瀧は明らかに機嫌が悪くなっていた。彼女を握る手に力が入る。
「お前さ、俺と奥寺先輩に付き合ってもらいたいわけ?」
「え……」
「どうなんだよ」
「どうって……だって、瀧くんは……」
「俺のことはいいんだよ!三葉はどうなんだよ。本当に俺と奥寺先輩の仲がうまくいけばいいと思ってる?」
「あ……」
今朝のことを思い出した。
瀧くんが奥寺先輩とデートするって思ったら、涙が零れた……
その時になってやっと気がついた
必死に目を逸らそうとしていたけど、私は瀧くんのこと……
だから、東京に来た。瀧くんを探した。
そして、こうして会えた!
……でも、私、勝手すぎるね。
応援してるフリして、瀧くんにいい顔しながら、本当はそんなこと思ってなくて……
「ごめんね、瀧くん、私、ズルいよね」
「おい、三葉!」
パッと瀧の手を振り解くと三葉は駆け出す。
だけど、鞄を持って走ったところですぐに瀧に追いつかれ、肩を掴まれる。
「待てって!三葉」
「見んといて!」
震える声。三葉が泣いているのがわかる。
「……お前、なんで泣いて」
「だって、私、ズルいんやもん!瀧くんと奥寺先輩の仲、うまくいって欲しいなんてちっとも思ってないくせに、良かったねとか応援してるフリして!瀧くんのためとか言っておきながら、心のどこかでうまくいかないで欲しいって思っとるんよ、私……」
顔に手を当てて三葉は泣き出す。
瀧は心底すまなそうな顔をすると、三葉を無理やりこちらに向かせ抱きしめた。
「ごめん、お前を泣かせるつもりはなかったんだ」
瀧の言葉に三葉は首を振る。
「瀧くんが悪い訳やないよ、私が……」
「三葉がズルいって言うなら、俺だって相当ズルいよ」
「え……?」
「奥寺先輩とのデートさ……うまくいかなかった。そりゃそうだ。俺の気持ち、全然入ってなかったんだから」
三葉は抱きしめられたまま瀧の胸に頬を当て、早鳴る心臓の鼓動を聞いている。
「先輩、俺に向かって『ほかに好きな子がいるでしょう?』だってさ。自分じゃ自覚なかったのに、完全に見透かされてた」
「瀧くん……ほかに好きな子おったの?」
か細い声で三葉が尋ねる。
「自覚なかったって言ったろ。気が付いたのは今さっき」
「……え」
「ズルいだろ?今まで奥寺先輩に憧れてますとか、そんな感じでいたのにさ。今日、先輩とデートしておきながら、もう別の子に惹かれてるなんてさ」
その言葉に三葉は瀧の背中に手を回してギュッと力を込める。
「会えた瞬間、わかっちまった。だから、三葉だけには言ってほしくないんだよ、他の人とうまくいって欲しい、なんてさ」
「ごめん、ごめんね、瀧くん……」
「なんで謝るんだよ」
「だって……」
三葉に触れる腕に少し力を込める。
「なあ、三葉はさ、俺に会いたくて来てくれたんだよな?」
その問いに彼女はコクンと頷く。
「ありがとな。俺も三葉に会いたかったんだと思う。お前が来てくれたから、それに気づけた。お前と入れ替わるだけじゃなくて、会って一緒に色んなことしたかったんだと思う。だからさ……」
三葉の両肩に手を乗せ、瀧は三葉を見つめる。
「俺の前くらいは、自分をごまかさないで、ちゃんと俺が知ってる『普段』の三葉でいてくれよ。な?」
「瀧くん……」
「そうじゃねえと、俺も調子が狂う」
頬を掻きながら照れくさそうに視線を逸らす。
瀧の言葉に落ち着いたのか、三葉は安心したように微笑む。
「君は、いつも私のこと、ちゃんと見てくれとるね……」
「まあ、お互い、他人に見せられないところを見られてる仲だからな」
「なっ!?」
「あ……」
やべぇと瀧は口を抑える。フルフル……と三葉の肩がわなないている。
「そう云えば思い出したわ……あんた、私の胸、触ったやろッ!!」
「な、なんでそのことをっ!?」
「四葉が見とったんやからね!」
「す、すまん!男の本能というか、浪漫というか、そこにあったから、つい」
「言い訳になるかっ!阿呆ッッ!!!」
「け、けどさ、三葉だって、俺の胸とか触ったりしてたんじゃねえの?」
――瀧くんって細身だけど、結構鍛えてあるなぁ。これが細マッチョ?
「な、な、な、何言うとるんよ!!!」
三葉は、顔を真っ赤にして瀧をポカポカ叩き出す。
「いた、痛いってやめろよ、三葉」
「まったくこの男は!」
いつの間にか二人とも笑っていた。
日記の中でしかやり取りができなかった。
でも、本当はこうして会って、
お前と
君と
話がしたかった。
笑い合いたかったんだ……
不意にスマフォのアラーム音が響り響く。
「あ……」
「どうした、三葉」
「……うん」
手に持ったスマフォのアラームを止める。
「帰る……時間やさ」
「え、もう……?」
瀧の言葉に無言で三葉は頷く。
秋の陽は傾きかけて、作り出す影はいつの間にか伸びていた。
並木道の横、東京の街中を何台もの自動車が走って去っていく。
「また、会えるよね?」
三葉の言葉を、瀧は黙って聞いていた。
「瀧くん?」
「なあ、三葉。こっちにギリギリいられる時間は?」
「え?……ええと、ちょっと待って」
カバンから手帳と取り出すと、書き出していた電車の時刻を確認する。
「うーん、乗る電車遅らせても、あと1時間もないかな?」
「それだけあれば、間に合うかな」
そう言った瀧はスマフォを操作し、どこかに電話を掛け始めた。
「……あ、親父?」
「え?瀧くんのお父さん……?」
「仕事中、悪い。すぐ終わるから。あのさ、知り合いの女の子がこっち遊びに来てて。なっ!?ちげーよ!」
瀧はチラチラと三葉を見ながら、顔を赤くしたり、大声を出したりと表情をコロコロ変えながら電話をしている。
「俺の大事な子なんだ。だからさ、ちゃんと家まで送っていきたいんだ」
(……え?今、なんかものすごいこと言ったような??)
「ああ、詳細はまた後で連絡する。一応連絡はしたからな!仕事頑張れよ、じゃあな!」
フゥと一息吐きながら瀧は終了ボタンを押す。
「あ、あの、瀧くん?今、家まで送るとか言ってなかった?」
「ああ。今から帰ったんじゃ、家に着くの夜中だろ?危ないから家まで送るよ」
「えっと……瀧くんの気持ちは嬉しいけど、私の家、東京じゃないんやよ」
あれ?私の言ってること変じゃないよね、と三葉は思うが、
「いやぁ、一度、糸守行ってみたかったんだよなぁ」
と、当の本人は腕を組んで、うんうん頷いている。
その姿を見て三葉は呆気に取られる。
「瀧くんのお父さん、まさか岐阜県とは思っとらんやろ?」
「家まで送るってのは嘘じゃねえし、着いた後で連絡入れれば……まあ後は何とかなるだろ?」
「仮に糸守まで来てもらっても、今度は瀧くん、帰れないやろぉ!」
「まあ、そこは神社の軒先でも貸してくれよ」
一晩くらい何とかするさ、と呑気に笑う。
「ダ、ダメやよ!一人でちゃんと帰れる!子供じゃないんやよ!」
三葉の言葉に、瀧は真顔になって一言。
「俺が三葉とまだ離れたくないだけだから」
「え……?」
「三葉は?」
「……えっと」
「俺の前では自分をごまかさないで欲しいんだけど」
「……瀧くんのいじわる」
瀧の服の袖をギュッと掴む。それは三葉も同じ気持ちということ。
「よし、じゃあ、とりあえず俺んち行こうぜ。準備して、いざ糸守だ!」
「え、ええっ?瀧くんち?」
「お前だって知ってるだろ。ほら、急ごうぜ、あんまり時間もないんだろ?」
三葉の手を取り、歩き出す瀧。
「まったく、この男は……」
それでも、やっぱり嬉しくて、三葉はその手を握り返した。
この時はまだわかっていなかった。
これから起こる数々の出来事を。
本当の意味で互いの大切さを知るのは、これからだということを。
それは、ティアマト彗星が最接近する前の日の出来事……