君の名は。SS たきみつ一週間の誓い ―おっ〇い星人タキ登場―

今日は1108日、おっ○いの日らしいので……

一応、全年齢としておりますが、ちょっとお胸なネタが中心となっておりますので、不快に思われましたら、申し訳ありませんとしか言いようがありません(平謝り)。

 

その日、私は頭を抱えていた。
「瀧くんに触りたい……」
今、私は、ただひたすらに瀧くんに胸を触って欲しかった……

 

それは遡ること数日前。

 

土曜日・朝……

朝。目が覚めると揉まれている。
そういうことが……よくある。

「……瀧くん」
「あ、おはよう、三葉」
「おはよう。それで、君は……一体、何をしてるのかな?」
「やっぱりいいよなぁ♪三葉のおっぱ痛ぇ!」
おもいっきり瀧くんのほっぺをつまむ。
「『いいよなぁ♪』やないよ。まったくこの男は毎朝、毎朝ぁ!」
更に頬をつねるが、それでも瀧くんはなかなか胸から手を放そうとしない。どれだけおっぱい好きなのよ!
「……もう起きるでね」
「えぇー……」
ベッドから起き上がろうとして、瀧くんを見れば、それはそれは名残惜しそうな瞳で私を……いや、胸を見ている!?

「ねえ、瀧くん?」
「ん、何?」
上半身を起こしながら顔を向ける瀧くんに、私はニッコリ微笑んで、
「これから一週間、私の胸、触るの禁止ね♪」
そう告げたのであった。


「ハァ……」
ふかーーいため息の後、くらーーい顔をした瀧くんが味噌汁に口をつける。
告知宣言から30分後、土曜日の朝食。外はこんなに晴れ渡っているのに、ここだけ空気がやけに暗くて重い。
「まったくこの男は。胸に触るの一週間禁止にしたくらいでそんなに落ち込まなくてもええやろ」
「だってさ、三葉のおっぱい、すげー好きだし」
「ごはん食べながら、おっぱい言うな!」
「お前が話振ったんだろ。だいたい、三葉だっていつも胸、気持ちいいって」
「わー!わー!それ以上、言っちゃダメやって!!」
「大体、なんで一週間も禁止なんだよ。まあ、朝、寝てる時に触ってる俺も悪いけど」
「そうやよ、人が寝てる時に襲うなんてズルいんやさ」
「お前、いくら揉んでも起きねえじゃん」
「そ、そんな訳ないやろ!」
「本当だって!」

私の胸にまつわる不毛な言い合いが続く……
瀧くん、どれだけ私の胸が好きなのよ。本当に呪われたりしてないよね?

「あの、瀧くんさ……」
「なに?」
「私と、その……おっぱいどっちが好きなんやさ?」
「ハア!?」
そう言ったまま、瀧くんは眉をひそめて固まっている。
「いや、だから、もし、私のおっぱ……じゃなくて胸がなかったら、瀧くん、私を好きでいてくれるのかなって」
「お前、また阿呆モードになってるだろ?」
「阿呆モード……?」

説明しよう!
いつもしっかりした感じの宮水三葉さんだが、偶にとんでもなく阿呆なことで悩むのだ!!

「私、阿呆やないよ!」
「そういうことじゃなくて……まさか、自分のおっぱいに妬いてるのか?」
「そ、そんな訳ないやろ!!自分の胸に瀧くん取られたくないなんて思ってないんやさ!!」
(こいつ絶対思ってたな……)
「と、とにかく!!一週間は胸触るの禁止!!!」
「マジかよ。……なあ、もし、約束破ったらどうなんの?」
「え……?」
「考えてなかったのか?」
「か、考えてたよ……」

考えてなかった……
そうやね、そうやね……瀧くんが困ること。
困ること……あ、そうだ!

「約束破ったら、合コンに参加してきます!」
「なっ……!?」
「私、きっとモテるんやろなぁ……」
「守る!絶対守る!!一週間でいいんだな!」
「そうやよー。今日から……一週間後の土曜日まで。頑張ってな、瀧くん♪」

かくして、私と瀧くんの長い長い一週間が始まった。

その時、私は、ただ瀧くんを懲らしめてあげようとしただけだった。
だけど、それが大きな失敗だったことに気づくのはそれから数日後……


日曜日・深夜……

「うぅ……ああ……」
うめき声が聞こえて目が覚める。
ベッド横。床に敷いた布団の上、瀧くんがうなされている?
無意識のうちに触ってしまうかも、という瀧くんの提案で、昨夜から一週間の間は別々の寝具で寝るようにしている。
「瀧くん、どうしたの……?」
心配になってベッドから身を乗り出すと、眠っていたけど、苦しそうにうなされている瀧くんがいた。
「瀧くん!」
電気を点けようとした時、瀧くんの寝言が聞こえた。
「やっと……この手が追いついたんだ……」
そう言いながら、虚空に手を伸ばし、なにやらモミモミしている。
「何に?」
深夜、真っ暗な部屋の中。私は独りツッコミを入れた。
「やっぱりいいなぁ……♪」
そう言うと、手がバタンと布団の上に落ちて、瀧くんはまたスヤスヤと深い眠りに戻っていった。


月曜日・朝……

「おはよう、三葉」
やけにスッキリした顔のスーツ姿の瀧くん
「なんだ?眠そうだな、大丈夫か?」
「大丈夫やよ……」

昨日あれから眠れなかったんやよ!
一体、どんな夢見てたのよ!?

「なあ、瀧くん、何かいい夢見とった?」
「え?あ、いやぁ、夢だからよく覚えてないなぁ……」
瀧くんは首の後ろを掻いている。

……絶対覚えてるよね?

「ふぅん……」
頬杖を突きながらジト目で瀧くんを見てあげる。
「なんだよ?」
「別にぃ。約束がんばってね♪」
「お、おぅ!」
しどろもどろな瀧くん。
私からおっぱいの価値無くなったら、どうなっちゃうんだろうと本当に心配になってきた。


火曜日・夜……

「遅いな……瀧くん」
帰りが遅くなるって連絡があったけど、こんなに遅くなるなんて。
時計を見れば、23時を少し回っている。
何か事故とか巻き込まれてやしないだろうか?
心配になってスマフォを手に取った瞬間、ドアの鍵が開く音がした。

「ただいまぁ」
「お帰り、瀧くん!」
慌てて玄関に出向いて瀧くんを迎える。
「悪ぃ、だいぶ遅くなった」
「お疲れ様でした」
そう言って瀧くんの通勤鞄を預かる。

「あれ?夕飯まだ食べてなかったのか?」
テーブルの上に乗った夕飯の品々を見て、瀧くんは驚いている。
「うん、瀧くんと一緒に食べようと思って。こんなに遅くなるとは思ってなかったけど」
「ごめんな」
「ううん、ええよ。私が勝手に待っとっただけやし」

冷めてしまった夕飯をレンジで温める準備を始めていると、スーツを脱ぎながら瀧くんが顔を出した。
「あのさ、三葉」
「なあに?」
「今週、暫く遅い日が続くから、夕飯は先に食べてて」
「仕事、忙しいの?」
「え、あ、まあ、そんなとこ」

……ん?
宮水の勘がなんか気になると言っている。

「今、どんなお仕事やっとるの?」
「そ、そりゃあ……その、なんだ。それは『企業秘密』ってやつだ」
「へぇ……」
瀧くん、嘘下手だからなぁ……
何か隠していることは間違いない。
だけどその後も、瀧くんは何を追及してもボロを出さず、疲れたからと言ってお風呂に入ってさっさと寝てしまった。


水曜日・夜……

今日も瀧くんは帰りが遅い。
ここに来て私もちょっと心配になってきた。
「浮気とかしとらんよね……?」

帰りが遅いって、どこか綺麗なお姉さまのいるお店であんなことやこんなこと……

瀧「いやぁ彼女が揉ませてくれなくて」
お姉さん「あら、可愛いボウヤ♪だったらお姉さんのを揉ませてあ・げ・る」
瀧「本当ですか!」

「いややぁーーー!!」
いやだがしかし、そういう店に行ってるだとすればと大抵タバコやら変な匂いがつくはず。
瀧くんのスーツにそんなおかしな形跡はなかった。
だとすれば、瀧くんの怪しい行動は何を示すのか??

 

『そういうの『疑心暗鬼』っていうんやさ』
「ぎしんあんき……?」
『疑って見てれば、何でも怪しく見えるってことやよ。お姉ちゃん』
「でもやよ、四葉
電話で妹に相談をしてみた。こういう時、物事を客観的に見れる妹は頼りになる。
『瀧さんが浮気?ないない、それは絶っ対ない。浮気しとったら、そうやね、私のカモちゃん、お姉ちゃんにあげるわ』
「あんたのバイクなんていらないわよ」
『まあ、そんな『たられば』を考えることすら、無駄無駄ぁって感じがするわ』
「うぅん……」
『だいたい、なんで急にそんなこと気にしとる訳?お姉ちゃんの方にも何か引っかかることあるんやないの?』
「ギクッ」
そうでした。私の可愛い妹はとっても勘が鋭い子でした……
『ほら、的確なアドバイス欲しいんやったら、教えてみない』
「うぐ…ぅ……」
『ほらほら』

四葉に瀧くんとの一週間の約束をかいつまんで説明した。

『お姉ちゃん、今、横にある姿見で自分の顔見とるけど、私、すごく呆れた顔しとるわ』
「悪かったわね!」
『でもまあ、お姉ちゃんと瀧さん、仲良すぎるから、少しは距離取ってもええんやないの?』
「どういう意味?」
『お姉ちゃん、瀧さんと結婚するんやろ?』
「えぇっ、いや……じゃなくて、そうなったらいいなぁって思うけど……」
『結婚したら、瀧さんとの子供欲しいんやろ?』
「ええっ!?結婚もまだなのに子供なんて」
『子供できたらさ、瀧さんの相手あまりしてあげられなくなるよね?』
「う、ううん……そうだと思う」
小さい四葉の相手も大変だったけど、赤ちゃんともなればきっと掛かりっきりになるはず。
『瀧さん、子供の世話で大変なお姉ちゃんから相手してもらえんようになったら、』
「なったら?」
『それこそ、寂しくて浮気してしまうかもしれんね』
「寂しくて浮気ぃ!?」
『まあ、そういうこともあるってことやよ。いつも甘々でくっつき過ぎだから、今のうちに少し離れた距離感に慣れておくのも……って聞いとる?お姉ちゃん』

寂しくて浮気……?
まさか、胸に触れなくて寂しいからって、お店のお姉さんじゃなくて、他の女の子に浮気しそうになってるんじゃ……

『おねえちゃーーん……』
「ありがとう、四葉。参考になった。それじゃ私やることあるから。じゃあね!」
『え、あ、うん、頑張って』

瀧くんに浮気されるくらいだったら、胸触られた方がマシ!
約束はなかったことにしよう!

「ただいまぁ」
タイミングよく、瀧くんが帰ってきた♪
「瀧くん!瀧くーーん!!」
「三葉!?」
「ふぎゃ☆」
玄関先で飛びつこうとしたら、瀧くんにターンで躱されて、ドアに激突する。
「だ、大丈夫か?三葉」
「だ、大丈夫やけど、ひどいやさ、瀧くん、避けるなんて」
「だって、お前の胸に触っちゃダメなんだろ?」
「そ、そう!その約束なんやけど!」
「あと二日、だよな?」
瀧くんがVサインをしている。
「え?」
「あと、木、金だよな?」
「……うん」
あまりに爽やかな瀧くんの笑顔。約束は止めたとは言えず、ただ頷いてしまった。
でも、その表情を見てると瀧くんが浮気することは絶対ないな、と宮水の、いや、私の勘はそう言っていた。


木曜日・夜……

ここに来て、私は新たな問題に直面していた。

「瀧くんと触れ合ってない」
瀧くんは、昨日あれだけ帰りが遅かったのに、今朝はいつもより早い時間から出勤している。
仕事、そんなに大変なんだろうか……?
おかげで触れ合うどころか、会話まで減っている。

私にとっても誤算だった。
よく考えてみると、あのへたれ……もとい、照れ屋な瀧くんが、胸にだけは何の躊躇もなく、触ろうとするのである。
そこから始まるスキンシップ……
そこから始まらなくても、いずれはたどり着く場所。
要するに今現在、胸に触れることを封じられた瀧くんとそういうことは一切できないのである。
そういうことってどういうことか?それは想像にお任せします(放り投げ)。

かくして、冒頭に至る訳なんだけど……
「うぅ……」
そうなのだ、私の大好きな瀧くんは『やる』と決めたら絶対やり遂げる男なのです。

昨夜も……
「瀧くん、一週間、本当に大丈夫?」
美味しそうに夕飯を食べていた顔を上げて、瀧くんは素敵なスマイルを見せてくれる。
「大丈夫だ。お前を合コンに行かせる訳にはいかないからな」
「う、うん……」
「どうした、三葉?」
「が、がんばってね」
「おうっ!任せとけ!」

浮気の心配はないと思うけど、なんでそんなに余裕なんだろう?
最初の数日はうなされてたくらいなのに。

気晴らしにテレビをつける。
何やらコメンテーターみたいな人が若者の恋愛事情について語っている。

『〇〇系男子など、最近の男性の特徴をまとめた……』

「なんでも〇系男子って分ければええってもんやないよねぇ。瀧くんは瀧くんやし♪」

『女性に興味がなかったり、悟りの境地を開いたかのような……』

「え……?」

もし、瀧くんが胸触れなくて、そのうち悟りの境地を開いたりしたら……?


三葉、俺はお前が傍にいてくれるだけでいいんだ。それ以上は何も望まない――


「イヤやぁぁーーーーー!!!」

瀧くんと触れ合いたいよぉーー!
触ってもらいたいよぉーー!
これって欲求不満?
私、こんなキャラだったっけ?
だって、瀧くんに触られるの気持ちいいんだもん。
気持ちがはにゃ~んってなるんだもん。

ちょっと待って!落ち着くのよ、三葉!
そうは言っても、瀧くんはとっても意思が強い人。
昨日の様子を見る限り、絶対、一週間は自分から触ってこない。

「くっ……」

まさか瀧くんのカッコイイところが最大の障壁になるなんて!
かと言って諦めるの?宮水三葉

否ッ!!

ならば取れる手段はただ一つ!

「ゆ、誘惑……するしかないんやさ!」
グッと拳を握りしめた。


「ただいまぁ」
「おかえりなさい。瀧くん♪」
「なに、玄関先で待っててくれたの?」
「うん♪そろそろ帰ってくると思ってたんやよ。鞄、持つね。あっ」
わざと鞄を落とす。
「大丈夫か?」
「うん、だいじょうぶやよー」
前かがみに鞄を取ろうとすれば……

チラリ☆

「……三葉」
「なあに♪」
キタッ!
「服装、胸元が緩い。見えるぞ」
「え?何が?」
「ブラ、見えてるんだよ!」
「えー?うそやー?」
照れたように胸元を抑えてみる。

そうやよ!瀧くんに見せてたんやよ!
さあ、遠慮しなくてもいいんやよ!
そして触ってしまったら、もう瀧くんは仕方ないなぁって許してあげるんやさ!

「出かける時は、絶対それ着るなよなッ!」
顔を真っ赤にして、部屋に行ってしまった……
心配してくれるのは嬉しかったけど、『作戦其の壱』は失敗に終わった……


次はお風呂前。次の作戦で絶対に瀧くんにメロメロパンチを喰らわしてやるんやさ!
「ねえ、たーきくーん」
「呼んだかぁー?」
脱衣所で瀧くんを呼ぶと反応があった。
「ちょっと下着、持ってくるの忘れてたんやさ。いつものタンスに入っとるで、適当に上下持ってきてぇ」
「俺がかよッ!?」
「お願い、今ちょっと手が離せなくて」
「マジかよ……何選んでも文句言うなよ」

ぶつぶつ言いながらも、行ってくれたようだ。
下着の引き出し。目立つところにできるだけ(自分なりに)えっちぃ下着を配置しておいた。
これなら瀧くん、いろいろ妄想してしまうやろ?

ガラッ☆
そんなことを考えていたら脱衣所の扉が少し開いて、瀧くんの手が伸びてきた。
「ほら、早く取れよ」
「あ、うん」
上下お揃いの下着を受け取ると、すぐさま扉は閉まった。
私が用意しておいた、えっちぃのじゃなかったけど、瀧くんの好きなタイプの下着だった。
「たーきくーん♪」
「な、なんだよ」
「やっぱり、この下着好きなんやねぇ」
「う、うるせえな、三葉にはそれが似合うと思ったんだよ」
「えへへぇ」
「さっさと風呂入れ!お前の後、俺も入るんだからな」
「はーい♪」

準備は整った、次で必ず瀧くんをっ!!

作戦第二段階に移行しまーす。
お風呂上り。さっき瀧くんが用意してくれた下着を身に着けて、寝巻を着て、さあ、いざ勝負!
「お風呂、先、ありがとう」
「おう」
コーヒーを飲みながらソファでくつろいでいる瀧くんの隣に座る。
「ねえ、瀧くん?」
「んー?」
「さっき選んでくれた下着、見たくない?」
「ブッ!?」
飲んでたコーヒーを吹き出した。
「……見たく、ない?」
「今日のお前、ちょっと変だぞ?」
「そんなことないよー?」
「……俺、風呂入る」
そう言うと瀧くんは立ち上がった。
「ええっ!?ちょっと瀧くーん」
「明日も仕事で早いからさ、ごめんな?」
「う、うん……」

流石に仕事と言われては、これ以上、瀧くんを誘惑する訳にはいかない。
『作戦其の弐』も失敗に終わってしまった……


そして、金曜日・夜……

「うう……」
仕事が終わり、家に戻ると私はテーブルに突っ伏していた。

今朝も瀧くんは早くに出勤してしまった。
悟りの境地に至ってしまったのだろうか?
おっぱいも揉ませてくれない、こんな彼女には呆れて、愛想を尽かしてしまったのだろうか?

男女の触れ合いって大切なんやね……

改めてそんなことを考えている。
約束の明日になれば、本当に以前のような瀧くんに戻ってくれるのだろうか?

逢うまでは、もうすこしだけって望んでいて、同棲する時は一緒に居たいって望んで、一緒にいるようになれば、触れたらダメとか、もっと触れ合いたいとか、私ってなんてわがままなんだろう……

瀧くんがおっぱいに触りたいって気持ち、何となくわかった気がする。
大好きな人に触れられるって素敵なことなんやね……
瀧くん、瀧くん……早く帰ってきてよ……

「なんだ、三葉、いるじゃないか」
「へっ?」
間の抜けた声が出た。振り返れば、瀧くんが立っていた。
「瀧くん……瀧くんがおる」
「ただいま」
「今日……帰り、早い……ね」
「おう!頑張って仕事終わらせてきたからな!」
「ううぅ……」
急にホッとして涙が出てきた。
「な!?どうしたんだ?三葉??」
「ごめんなさい……もう約束はいいから、瀧くんにギュッとしてもらいたいんやよぉ」
「なっ!?」

立ち上がって瀧くんの前に立つ。
「……ダメ?もう私に触りたくない?」
「何言ってんだ!!一週間ずっと我慢してたんだぞ!ちょっとでも触れたら、もう抑え効かないと思って必死に……」
「本当に?」
「本当だよ!それなのにお前、昨日はチラチラ、下着とか見せてくるし、我慢してるこっちの身にもなってくれって」
ハァ……と瀧くんはため息混じりに頭を抑える。

瀧くんも、ずっと我慢してたんだ……
やっぱり瀧くんは意思が強い。
「ごめん……」
「いいって。じゃあさ、後向いて」
「う、うん……」
瀧くんに背中を向ける。そしたら……
後から抱きしめてくれた。器用に胸には触れないように。
「これならセーフか?」
「うん、セーフ」
「あと三時間くらいなら何とか我慢できる」
「え?」
「今、夜九時だろ。土曜日まであと三時間」
「あ……」
「土曜日までの約束だったよな」
「……そうやよ」
瀧くんの腕に触れる。久しぶりの瀧くんの引き締まった腕。
耳元で瀧くんが囁く。
「頑張って仕事片付けて、月曜日有給取った。これで三連休。日曜も翌日のこと考えずに三葉といられる」
「そ、そのために朝から夜遅くまで仕事してたの!?」
「最初はしんどかったけど、すっげー我慢した後に三葉に触れたら、どうなるかなって、今はちょっと楽しみ」
「瀧くんも、結構な阿呆やよ」
「三葉限定なら、いくらでも阿呆でいいさ」
「まったくこの男は……」

瀧くんの腕を解くと、私は振り返る。
悪戯っぽい笑みを浮かべてる瀧くん。
今の私はどんな顔をしてるんだろうか?

「夕飯食べてる間に、お風呂入ってくるでね」
「おう」
「お腹いっぱいになりすぎないでね」
「え?なんで?」
「瀧くん、眠くなったら困るやろ」
「そ、そうだな……」

脱衣所に入ってから、一ついいことを思いついて思い付いて顔を出す。
「瀧くーん」
「どうした?」
「七十二時間、一緒に過ごそうね」
「七十二時間?」
「私も月曜日、有給取るんやよ」


ここから先のお話は、私は読み手の皆さんに委ねたいと思います。

それじゃ、瀧くんが待ってるので♪

 

おしまい