君の名は。SS 夏恋瀧三お誕生日

昨年書いたSSですが(笑)

瀧くんが成人した時に、三葉が隣に居られるのはこのif軸しかなくて。

書いてて楽しいから良し!

 


「瀧くん、お誕生日おめでとう」
「いや、三葉だって誕生日じゃないすか」
「でも、瀧くん成人やからね。やっぱり今日は瀧くんにとっておめでたい日やと思うよ♪」
今日は瀧くんの二十歳の誕生日。正直、一緒にお酒を飲んだことはあるけど、それでも年齢に遠慮なく飲めるからって、お酒が飲めるお店を選ぶことにした。
どこのお店がいい?って聞いたら、割り勘でいいから、夜景がよく見えるレストランがいいなんて、結局最後は自分で予約までして。瀧くんにしては意外なお店のチョイスだと思ったけど、デートする分にはロマンティックで素敵かな♪
「三葉も誕生日、おめでとう」
「ありがと。でも、女性としては年をとっていくっていうのは、複雑な気分やよ」
冗談半分でそんなことを言いながら、金色に輝くシャンパンが注がれたグラスを手に取る。
「二人の誕生日に乾杯しよっか?」
「はい」

――乾杯

東京の夜景を眺めながら、ゆったりと二人の時間が流れる。
再会して、つき合って2年とちょっと。今年は私も新社会人として、毎日慌ただしく働いているけど、私達の関係は至って順調。
むしろ高校生から大学生に進学して、日に日に素敵に成長していく瀧くんに呆れられないように、影では色々がんばってます!

「でも、瀧くんがこういうお店リクエストするとは意外だったなぁ」
「やっぱり雰囲気が大事だと思ってさ」
「そうなんやぁ」
デザート前の落ち着いた時間、お酒でほんのりいい気分で外を眺める。
冬の凛とした空気の中、東京の灯りはいつも以上に、まるで宝石箱みたいに輝いて見える。ウィンドウ越しの夜景に見とれていると、ふと窓に映る瀧くんが私を見つめていることに気がついて、なあに?と愛しい彼へと視線を戻す。
「ねえ、三葉。二十歳になったらできることって知ってる?」
「うーん……お酒でしょ、タバコは瀧くんは吸わないか。選挙は18歳からになったんだっけ?あとは……」
口に指を当てて考え込んでると、名前を呼ばれた。

三葉って……

その呼ばれ方に、ドキリと胸が高鳴る。
いつか愛しさを込めて呼んでくれた、私の名前。
今は、いつだって傍で呼んでくれる私の名前。

「二十歳になったらできること」
「うん……」
「親の同意がなくても結婚できる」
「……うん」
「ちゃんと同意は得ます。でも、いつか言ったみたいに、俺、ちゃんと考えてるから。だから、今日は決意表明」

嬉しさと恥ずかしさで、何と言っていいのかわからない。
ただ、顔が真っ赤になってることだけはわかって。思わず毛先に触れてしまう。
瀧くんも首の後ろに手を当てて。
お互いわかってる、照れてる時の相手のクセ。
だから、きっと想ってることも同じなんだろう。

二人の未来。これからも沢山の困難があるんだろうけど、それでもこうして傍にいて、同じ未来を見ていてくれてるなら、きっとどんなことがあっても大丈夫。
いつか並んだ互いの道が、一つに重なって、あなたと家族になれたら……
ううん、そうなりたいって強く思えた。
だから、私も決意表明。
「瀧くん」
「はい」
「私の答えはずっとここにあるからね」
胸に手をあてて、微笑みを返すと、瀧くんもわかってくれたのか優しく微笑んでくれた。

「お待たせしました。デザートとなりますが、お誕生日を迎えられたお二方への特別メニューです」
私たちの間を見計らったかのようにギャルソンが、苺や生クリームたっぷりの乗った豪華なパンケーキを運んできた。
「瀧くん、これ……!」
「三葉は、普通のケーキよりもこっちかな、と思ってレストランにお願いしてみたんだよ」
「瀧くんの誕生日をお祝いするつもりがサプライズばっかりでなんか悔しい……」
「三葉も誕生日だろ?だから、これからも二人一緒に」
「うん!」

やっぱり瀧くんは瀧くんだね……
彼と一緒に居られることが本当に嬉しくて。思わず瞳に溢れてきた想いを指で拭う。

 

「三葉」
「瀧くん」

――誕生日おめでとう!!