君の名は。SS 彼氏が浴衣に着替えたら。

そう云えば、上げ忘れていたな、と思い出しました(笑)

暑中見舞い用に書いたSS。季節外れですが笑、載せておきます。

 

ピンポーン……と聞き慣れた音の余韻を感じながら、ほんの短いこの待ち時間だけはなかなか慣れないな、なんて思う。
どこかソワソワした感覚で、ただ相手からの反応を待つ。今日は彼女が部屋に居ることは初めからわかってる。だけどまあ、なんというか。もしも会えなかったとしたら、とてもガッカリするであろう自分というものが容易に想像できて、未だ反応がないドアの前、つい首の後ろに手を当ててしまう。
「いらっしゃーい!」
と、勢いよく扉が開き、柔らかい声と共に彼女が顔を出した。優しそうな大きな瞳、まっすぐ長い綺麗な黒髪、整った口許がニッコリと微笑んで。その笑顔が自分だけに向けられている。

彼女に会えた。

たったそれだけのことなのに、俺にとっては一気に世界が塗り替えられたような、そんな感覚に陥る。
本当にまあ、なんというか。……ガッカリの正反対だ。照れくさいから、できる限り顔には出さないようにしたいのだけれど、そんな隠し事はとてもできそうもない。何故なら彼女に会えた瞬間、とてつもなく浮かれているんだと、これまた容易に自覚してしまってるのだから。
「ん、どうかした?」
小首を傾げた彼女に対し、俺は首に触れていた手を下ろすと大切な君の名を呼ぶ。
「あ……えっと……」
一瞬、照れくさそうに視線を逸らしてから、軽く頷き彼女はもう一度俺に視線を戻す。
「瀧くん」
こうして互いの名前を呼び合う度に、どうしてこんなにも君への愛おしさが増すのだろう。
そんな俺の想いはちゃんと伝わったのか、三葉は毛先に触れながらハニかむと「暑かったでしょ?入って」と俺を招き入れる。
夏至を過ぎ、夕暮れに近づく時間は日に日に短くなっているとは言え、まだまだ明るく暑さに眩む十五時過ぎ。真夏の太陽から逃れるように、おじゃまします、と会釈して彼女の部屋へと足を踏み入れた。


「瀧くーん、麦茶でええかな?」
「あ、助かる。もう喉カラカラだよ」
「今日も暑いもんねー」
キッチンから彼女の声と共に冷蔵庫の扉が開閉する音が聞こえてくる。
今年は少し遅めの梅雨明けだったけど、いざ夏本番ともなれば毎日が茹だるような暑さ。連続猛暑日がどうとか今朝もニュースで言ってたようだけど、まあ今日だけはいくらでも晴れてもらって構わない。
「はい、どうぞ」
部屋の真ん中に置かれたテーブルの上、カランと心地よい氷の音を響かせながらグラスが二つ置かれた。
「サンキュ」
その一つに手を伸ばすと、早々にグラス周りについた水滴が指に触れてひんやり気持ちいい。鼻をくすぐる麦の香ばしさを感じながら、そのまま喉に流し込むと乾き切った身体を一気に潤してくれる。
「はぁ……美味い」
「良かった。もう一杯入れようか?」
「ああ、頼む」
「ちょっと待っててねー」
グラスを受け取ると三葉は機嫌良さそうにキッチンに舞い戻っていく。外の暑さから解放された彼女の部屋。一服したせいか俺も漸くリラックスして、背もたれ代わりにシングルベッドに寄りかかり彼女の後ろ姿に目をやった。
冷房が効いているとはいえ、暑いせいなのか、それともずっと家に居たせいなのか、ショートパンツにタンクトップのラフな格好。もともとスタイルはいいし、足は白くてスラリとしてるし、それに……
「はーい、お待たせ」
「お、おう……」
グラスを差し出してくる三葉、ではなく、つい決して嫌いではない胸元のふくらみに目が行ってしまう。
何と言えばいいのか、夏らしく素肌をさらした格好というのは目のやり場に困る。別に三葉との関係を考えればそれ以上も見たことがある訳だが、中途半端に見えてる状況は逆に色々と妄想してしまう。
くっ……こんなことを考えてしまうのは俺が悪いのか?それとも好きな人に対する本能のようなものだから仕方ないと開き直るべきなのか??

兎にも角にも今は煩悩冷ますべし!と自分に言い聞かせ、一気にグラスを煽る。
「そんなに慌てんでもええのに」
「いいんはよ、ほへへ……(いいんだよ、これで……)」
口の中に入り込んだ氷を奥歯でかみ砕きながら、対面に座った三葉からそれっぽく視線を逸らすようにテーブルに片肘を当て頬杖をついた。
「で、これからどうしよっか?」
「そうだなぁ……」
頬杖のまま窓へと視線を向ける。薄いレースのカーテン越しでも眩い陽射しが感じ取れる。エアコンで快適に保たれたこの部屋だから気にはならないが、どこか遠くで響く蝉の合唱が夏らしさと共に、外はまだまだ暑いんだぜぇ!!とシャウトしているように聞こえる。
「ちょっと早いかもしれんけど、瀧くんさえ良ければ……私は別にええよ」
「……いいのか?」
「うん。それに……」
「それに?」
「あ、いや!なんでもないんやさ!!」
慌てて手を振り否定する三葉。何故顔を赤くする??そんなツッコミを入れようとした俺を制止するかのように、三葉は立ち上がると「じゃあ、早速やけど」と照れくさそうに微笑みを浮かべ、一言。
「瀧くん……脱いで?」


***


(浴衣かぁ……)
三葉とのデートで立ち寄ったカフェで浴衣姿の女性二人組を見かけた。そういえば今夜は花火大会の中継があるとか言ってたような。そんなことを考えながらテーブルにつくと、何やら不機嫌そうな彼女。
「三葉、どうかしたのか?」
「別に……」
「"別に"っていう顔してねえぞ」
ほら、とメニュー表を手渡せば、いつもならニコやかな表情を返してくるのに、あからさまにツンケンした態度。
「もしかしてどこか体調悪いのか?熱とかあるんじゃないのか?」
あまりに普段と違う様子が心配になって、額にでも触れようと前のめりに手を伸ばすと三葉は慌てて首を振った。
「ち、違う!別にどこも悪くないんよ!……って、ああ、もうっ、ごめんなさい!」
「へ?なんで謝んだよ……?」
「だって、瀧くん、他の女性(ひと)に見とれてたと思って……」
「他の女性……?」
三葉がチラリと視線を送る。そこには談笑している先程の浴衣姿の二人組。なるほど、と思うと同時につい笑ってしまった。
「浴衣姿が珍しいなって思っただけだよ」
「うう、そんなに笑うことないやろー。わかってまーす、私は瀧くんに大事にされてまーす」
口をすぼめながらの拗ねた口調。でも今度の拗ね方は、先ほどまでのツンケンさは無くて、どちらかと言えば可愛らしい拗ね方だ。
彼女と出逢った頃は、もっとシッカリとして、落ち着いた雰囲気しか見えてなかったけど、今は俺の前でこんな風に色んな表情を見せてくれる。そして俺自身も自然とそれを受けとめられるようになってるってことは、それだけ俺達二人の絆、三葉が言うところの"ムスビ"が強くなってるってことなのかな。
だからそうだな、こう言ってあげれば安心してくれるだろうか。
「俺が三葉以外に見とれることなんてないよ」
ごく自然に思ったことを口にしてみた。彼女は驚いたような表情をしてから、ありがと、と小さな声で呟いた。

「瀧くんさ、」
「ん?」
飲みかけのコーヒーカップから口を離し、ソーサーの上に置く。顔を上げると三葉が見ていたスマフォから視線をこちらに移した。
「花火見に行かない?って言ったらどうする?」
「いいんじゃないか。俺も三葉と一緒に花火大会行ってみたいよ」
「ふふっ、良かった。……じゃあさ、浴衣姿で行ってみたいって言ったら?」
「え!マジ!?三葉、浴衣着てくれるのかッ!!」
思わず身を乗り出して聞いてしまう。
「ちょっと瀧くん、声が大きいって」
クスクスと三葉に笑われてしまったが、こればかりは仕方ないだろう。夜空に煌めく大輪の花と、光に照らされた浴衣姿の三葉……。想像しただけで、花火大会が三倍増しで楽しみになってしまう。
「さっき瀧くん。浴衣に見とれてたでね♪」
「だから、見とれてねーって。けど、三葉の浴衣姿は本気で見たいぞ」
「わかった。じゃあ、浴衣を着る代わりに瀧くんに一つだけ条件!」
「条件?」
「うん。それはね……」


かくして俺は、Vネックシャツにステテコ姿で洗面台の前に突っ立っている。
三葉が出した条件。それは二人で一緒に浴衣を着ること。そのため俺はこれから浴衣に着替える訳だが……
「それにしても、」
鏡に映る自分の姿を眺めながら、このステテコ姿というのは何と言うか間が抜けた格好のような気がする。
昔のお笑い芸人とか、どこかの某パパのイメージがあるからだろうか?まあ白だとあまりにもそれっぽいので、せめてグレーにしてみたのだけれど。
浴衣にはこういう肌着が必要だということは予め三葉に聞かされていた。こういう和装については神社の巫女さんだった彼女の言葉に従うのが一番である。
ということで早速、彼女から手渡された浴衣に袖を通してみる。何と言うか、普段は上下分かれた服を気慣れているせいだろうか、上下一体というのはなかなか新鮮だ。特に目立つような柄もなくシンプルなデザイン。どこか夜空を思い起こさせる濃紺の色合いは落ち着いた感じで悪くない。
「どうかなー?瀧くーん」
向こうの部屋から三葉の声が届く。
「ちょっと待ってくれー」
そう言ってから、まずは適当に衿を合わせ手を伸ばしてみた。袖(と言うのか?)の長さはこんなもんか?裾(と言うのか?)を見てもまあ問題ない感じで?
「取り敢えず大丈夫そうだぞ、三葉」
「良かった。じゃあ、こっち来てくれるかなー?」
「お、おう……」
そう。流石に帯は自分で締めることはできない。だから、こうして着付けができる三葉の家にお邪魔することになった訳なのだが……
遠慮がちに部屋に戻ると、三葉が大きな瞳を更に大きくして、わー♪と声なき声を出しながら、これまた音なき小さな拍手をする。三葉のこの反応、どこかで見たことがある。……あれはそう、確かハリネズミカフェに行った時だ。
「三葉、悪いけど、早いとこ帯結んでくれ……」
ハァと深くため息をついてから、目をキラキラさせてる三葉に懇願する。ステテコ姿が見えないように必死に衿元を抑え込んでる状況は何というか気恥しい。
「あ!?ご、ごめんね」
我に返って慌ててやってきた彼女は、俺の正面に立つと頷きながら時折浴衣に触れて何やら確認を始める。
「サイズは……うん、大丈夫そうやね。流石、私やなぁ」
「なんで流石なんだよ」
「だって、この浴衣作ったの私やよ?」
「マジ?手縫いかよ!?」
そう云えば、ちょっと前に……
『ちょっと瀧くん、サイズ測らせてねー♪』
メジャーを持ち、意気揚々とした三葉に上下左右、ありとあらゆるサイズを測られたような記憶がある。

「瀧くん、私がこういうの得意って知っとるやろ」
「まあ、それは……。けど最近、仕事忙しいとか言ってたろ。……無理したんじゃないのか?」
「仕事はまあ、忙しかったけど。でも、これはええ息抜きやったよ。それに瀧くんが着てくれると思ったら、つい張り切ってまった」
背後に回った三葉が浴衣に触れ、背中辺りの位置を調整してる。そのまま今度は正面に。少し真剣な眼差しで衿を持ち、また位置を調整していく。この状況では既にシャツとステテコ姿は見られている訳だけど、三葉は全く気にならないようで。
「うーん、やっぱり瀧くん痩せとるから、タオル入れた方がええよね」
俺にはよくわからないことを呟きながら、遠慮なしに身体に触れてくる。
「えっと、タオルと腰紐は、と」
何かを探しに行った三葉が漸く離れてくれたが、俺は衿元が全開になったまま姿勢が固まっている。浴衣とは自分で着れないとこんな状況になってしまうのか……。完全に受け身状態で彼女に触れられまくるというのは何ともこそばゆい。
「お待たせー。よいしょっと」
戻ってきた三葉は腹周りにタオルを当てると、その上から細い紐で括りつけていく。それから片膝をつくと正面から背中へぐるっと手を回した。と、彼女の上半身が胸の辺りに触れて何気なしに視線を下ろすと、いつもより薄着なせいか彼女の胸元が見えた。
「くっ!?」
「どうかした?瀧くん」
「な……なんでも……ねぇ」
「もしかして、きついとか?」
「イヤ、チガウ……」
変なスイッチが入らないよう、天井を見上げ、(木組みが一本、木組みが二本……)と心の中で必死に唱えながら理性を保つ。
「ヘンな瀧くん」
笑いながら彼女は着付けを再開する。衿元を整え、帯を当て、くるりと回して、再び背中の方に回るとグイグイと帯紐を結んでいるようだ。そうして……
「はい、できた!」
「おー……!」
さっきまでは何ともだらしない感じだったけど、こうしてしっかり帯が締められると文字通り引き締まった感じがする。
「どうだ?三葉、変じゃねえか?」
「うん!とっても……」
早速彼女に見てもらおうと振り返ると、にこやかな表情から、目を丸くし、そのまま頬を染め、毛先に触れ、俯き、最後に「……ええと思うよ」とごにょごにょ呟いた。
「どうした?三葉。やっぱり変なのか……?」
「ち、違うんやって!とりあえず今度は私が準備するでね!!」
あたふたと慌てた様子で彼女は洗面所の方へと行ってしまった。


***


三葉が戻ってくるまでの間、まだ着慣れていない浴衣にどうしたもんか、と腕を組む。座ると折角着付けしてもらった浴衣が崩れてしまいそうで、仕方なく立って待っていようかと思ったところに、ベッドの上に置かれた浴衣が目についた。
三葉が着る予定の浴衣だろうか?白と橙色の二色をメインに花柄模様があしらわれたもの。普段あまり目立たないようにしている三葉にしては珍しく目を引く色のチョイスだな、なんて思ったけど、同時に彼女がこれを着たらどんな感じになるのだろうと期待が高まってくる。
「どうかしたの?瀧くん」
と、いつの間にか戻ってきた三葉が後ろから覗き込んできた。
「これ、三葉の浴衣か?」
「うん、そうやよ。なんとなく瀧くんの浴衣と並ぶとええ感じかなー?なんて思って選んだんよ」
「へえ……じゃあ、早く着替えてみせてくれよ」
そんな俺の言葉に、三葉は何かに気づいたように「あ……」と声を上げた。
「どうかしたのか?三葉」
「あー……まあ、瀧くんやったら別にええか」
「何が?」
「着替え。瀧くんに見られても……」
一瞬、互いに無言。
「……あ!?いやっ、俺はそういうつもりじゃなくてだな!!」
一間しかない一人暮らしの彼女の小さな部屋。ここで着替えるとなると、俺は居場所がなくて、必然的にそうなってしまう訳で?別に今更だってことはわかってるけど、それでも何だか照れくさくて、あたふたとしてしまう。
「そ、外で待ってるから!」
「駄目やって。外はまだ暑いから……」
部屋を出ようとした俺の浴衣の袖をつままれる。
「……ね?」
三葉の方に振り向けないまま、俺はそのまま彼女に背を向けてその場にドカッと座り込み、胡坐をかく。
「じゃあ……後ろ向いてる」
多少浴衣が着崩れてしまうかもしれないが、そこはまた三葉に直してもらえばいいだろう。
「私はそんなに気にせんのに」
「着替えてるとこ、じーっと見てる訳にはいかねえだろ!」
「意外に紳士やね?」
「"意外"は余計だ。いいから早く着替えろよ……」
「わかった。ちょっと待っててね」
暫くして背中越しに衣擦れの音が聞こえてきて、俺は目を瞑る。
別に俺と三葉は恋人同士だし、男女の関係だし、やましいことはないはずだけれど、こんな風にどこか普段と違う感覚に陥っているのは、着慣れてない浴衣姿のせいだからだろうか……?

「まあ、とりあえずこんな感じかな?」
彼女の声で目を開く。目を瞑ってた時間はそれほど長くはないはずだけど、やけに待たされたような気分のまま、目に映ったのは見慣れた彼女の部屋の一角。明るい現実に舞い戻ってきたことは認識できたものの、三葉の方に振り返るのはまだ気が引けてそのまま無言で部屋の壁を見据え続ける。
「たーきくん♪」
「うわっ!?」
と、不意に耳元で囁かれて、俺は反射的に振り返った。姿勢が崩れそうになるのを手で支えながら彼女を見上げると、腰を屈め毛先に触れながら微笑む浴衣姿の三葉。
「大丈夫?」
「お、おう……」
それ以上、言葉が出なかった。さっきまでいつものように会って、話をして、見つめていた彼女が、ほんの少しの間にいつもと全然違う雰囲気に変わっていて……
早鳴る心臓に自分でも驚いてしまう。それはこの恰好のせいか、それとも浴衣姿の彼女に見惚れてしまってるからなのか。ぎこちなく立ち上がると、彼女を正面にしながらいつものように首の後ろに手を当ててしまう。
「どう……かな?」
「似合ってるよ……」
「それだけ?」
安易な褒め言葉ならいくらでも言えそうだけど、そんな言葉でいいのかと思い、うまく口にできない。自分の恋愛ボキャブラリーの乏しさに凹みつつ、それでも何かを言わねばと考えを巡らせていると、三葉が一歩近づいてきて、俺にそっとしなだれた……
「夏はやっぱり浴衣はええなって思っとるけど、でも……見て欲しい人がいてくれるから、着てみたくなると思うんよ」
甘えたような少しゆっくりとした口調で、安心しきったように俺に寄り添ってくれる。だから、俺も。
ゆっくりと彼女の肩に腕を回し、ほんの少し力を込めて抱きしめた。
「なんかいつもと違うからビックリして。……その、うまく言えねえけど、三葉のこと、もっと好きになった」
「そっか……嬉しい、な」
夕暮れが少しずつ近づいてるとは言え、まだまだ明るい夏の午後。そんな真夏の大都会のほんの小さな一室で、大切な人と浴衣姿で抱き合っている。それはなんだか非日常のように感じつつも、二人だからこその特別なひとときにも感じる。
……だからだろうか?つい、こんな気持ちになってしまったのは。

両肩に手を置いて彼女の顔が見えるくらいまでほんの少し距離を取る。そうしてピンク色の唇にそっと指で触れた。
「キス……したい」
今、この瞬間の君を独り占めしたくて。
「キスだけ?」
君も拒まずに俺を求めてくれる。
「……今は」
「うん……」
浴衣姿で二人きり。触れ合う互いの浴衣。心のままに惹かれ合い、同じ時間(とき)を重ね合う。

こんな風に君と過ごす。

それはとても些細で、そしてかけがえのないこと。
今日、明日、そしてこれからも……

「花火、楽しみだな」
「今日はずっと一緒に過ごそうね」

君に出逢えた奇蹟(ムスビ)に感謝して。