君の名は。SS お題『好きの伝え方』

長らく続いていたワンライも一区切りしたらしいとのことで、参加されていた皆さん、大変お疲れ様でした。
私も初期に何回か書いていましたが、折角なので気に入ってるのをひとつ。
お題に対して上手く答えを示せたかな?なんて思ってます。


きっとどこかでわかっていた……
『糸守町彗星災害 犠牲者名簿目録類』
この分厚い本をめくる前から。いやもっと前、あの滅茶苦茶になった糸守の風景を見た時から、きっとわかってた。
だけど、認めたくなんてないから。
認められるはずなんかないから!!
"違う"という理由を必死に探して、探して……そしてやっと俺は、

宮水三葉(17)

お前を見つけた。
「……ッ!?」
顔が苦痛に歪む。自分の足を強く握り必死に意識をここに置く。俺のその反応に、背中越しに先輩が話しかけてきた。
「え?この子なの……?絶対なにかの間違いだよっ!!」

言うな……

「だってこの人、」

頼むから、言わないでくれ……

「三年前に、亡くなっているのよ!」

そんな訳あるかよッ!!あいつが、あいつが死んでるなんて……そんな訳ッ!!
どんな理由を口にしても、変わらない事実はある。どこかでわかっていながら、ただ認めたくない、その一心で俺は叫ぶ。
「つい、二、三週間前に!!」

――あんた今、夢を見とるな?

頭の中に響く、その声。夢?夢って……?
『あいつ』の名前が朧げになる。俺は一体……
それでも必死に何かを繋ぎ止めようと、俺は右腕に巻かれたミサンガに縋りつくように、左手を添えた。

*   *   *

図書館から借りてきた糸守町の彗星災害に関する本に一通り目を通すと、俺は背もたれに寄りかかり天井を仰いだ。

なんだよ……お前。なんなんだよ……
俺、ここまで来たんだぜ、お前に会いに。
お前、情報少なすぎて大変だったんだぜ。
お前を探すために、色んなとこ回って。色んな人に聞いてさ。

「見つかる訳ねえじゃん……」

まぶたを閉じ、手で押さえる。視覚を閉ざして、少しでも意識を集中すれば、お前の顔が思い出せそうな気がして。

今日さ、家出る時、心配してたんだぜ。
急に会いに行ったら迷惑だろうか、驚くだろうかって。もしかしたら、お前、いやがるかもしれないってさ。

「それでもさ、」

もし会えたら、少しくらいは喜んでくれるかもって期待もしてて。

「俺達、会えばぜったいお互いがわかるはずだから……」

閉じた瞳に熱いものを感じる。それは悲しいのか悔しいのか、それとも……

「会えっこねえじゃん、会えっこ……」

そもそも俺はあいつに会ってどうしたかったんだろう。
入れ替わりが途切れたから心配で?

――食べてるのは瀧くんの体!それに私だってあのお店でバイトしてるし~♪

そうだよ、迷惑な女だったじゃねえか、人がバイトした金、勝手に無駄遣いしやがって!

――うぬぼれないでよね!彼女もおらんくせに!

ズケズケと言いたいことばっか言いやがって!

――私になっても、瀧くんになっても、デートがんばろうね!

人の人間関係、勝手に変えやがるし!

……今までの生活が異常だったんだ。普段の生活に戻っただけだろ?だって、もともとあいつは三年前に、

――……覚えて、ない?

「みつ……は……」

……俺は、俺はッ!!

「なんだよ、お前。……お前の居る場所、遠すぎなんだよ」

まぶたを抑えながら、馬鹿になったみたいに、ただ笑えてくる。

俺さ、お前に言いたいことがあるんだよ。
そうだよ、俺、お前に会って、言いたいことがあるから、ここまで来たんだよ。

今更気づく、この想い。

「なあ……三葉、教えてくれよ」

お前に、この気持ちを伝える方法を……さ。


>あとがき
まず一時間で話を考えて書き切るのは無理でした(笑)
話を(オチを)何となく考えてから最後まで書き切るのに一時間くらいですね。
これについてはオチが決まらないまま何となく書き始め、最後にどんな伝え方ならいいだろう?と考えて考えて、考えてみたけど結局オチが思いつかず、寝てしまい、朝、起きて、ふと『あー……伝え方が"ない"でいいのか』という考えに至りました。
答えがないのが答え、みたいな感じで上手くお題に解を示せたのかな?なんて思っています。

>ワンライ
全集中の呼吸で書けるのはいい反面、やはり誤字脱字が多く、雰囲気重視になってしまうため(構成面で弱い)、アップする際は見直しが必要になりますね;;
それでもあーだこーだとぐだぐだ考えて書かないより、とりあえず書け!と勢いのままに書くと何となく書きたいテンションが上がるので、そういう面ではプラスに作用するのではないかな、なんてことも思っています。
他に数作ワンライで書いたSSもあるので、その内見直してアップできましたら。

それではお読み頂き、ありがとうございました。